風変わりなというのがぴったりな作品です。
私が手にしたのは、奥田英朗のデビュー作という理由でした。買ってからもなかなか読む気が起きなくて、1年ぐらい寝かせていたけど、ヨメさんが面白いと言っていたので、読み始めました。
「イン・ザ・プール」をはじめとする伊良部シリーズのコミカルさでもなく、「最悪」、「邪魔」といった不幸のどん底に落ちていくクライムサスペンスでもない。ジョン・レノンが凶弾に倒れる前年に日本の軽井沢でバカンスを過ごしていたということをモチーフにした、架空の作品です。他の作品とあまりにも毛色が違ってるという思いが、読むのを躊躇させていました。
主人公は世紀のポップスター、ジョン。今は奥さんの故郷である日本で隠遁生活を送っている。ジョンは便秘になってしまう。それも並大抵のものではなく、何週間もずっと出ない。便をきばる音が凄い、例えば「ふがばばばばっ。ふんむ。うりゃりゃりゃりゃっ。」(原文まま)とか、音の表現が多彩です(^^; ほんとに中盤までずっとこんな調子なんですよ!
彼はジョン・レノンではなく、あくまでもジョンなんだけど、頭の中ではこの音を読むたびに、ジョン・レノンが便秘で苦しんでる姿を想像して、苦笑いが出てしまいます。読んでいて不安になる頃から、ファンタジーな展開になっていくのですが、その中ではジョンの過去のトラウマや気になっていたことが見えてくるんですよ。
読み終わって、もう少しジョン・レノンがどういう人か知っていたら、もっと面白く読めたんだろうなという気はしました。ファンタジーなところは好き嫌いが出ると思いますが、便秘の理由も最後には明かされるので上手くまとまってると思います。
デビュー作でこういうのが書けるのは、奥田英朗の懐の深さを感じましたね。
人に積極的に勧める作品ではないけど、冒険してみたい方は読んでも損はないと思いますよ(^^;