1944年12月、連合軍の攻勢の前に国家存亡の危機にさらされたナチス・ドイツ。宣伝相のゲッベルスは、新年1月1日にヒトラー総統の大演説によって国民の戦意を劇的に高揚させる起死回生策を思いつくが、肝心のヒトラーは自信を喪失し、引きこもり状態。そこで、彼に全盛期のカリスマ性を取り戻させる困難な任務を託されたのは、かつての名優で、今は強制収容所にいるユダヤ人教授だった…。(Amazon.co.jp)
「善き人のためのソナタ」のウルリッヒ・ミューエがヒトラーを指導するグリュンバウム教授を好演しています。彼はこの作品を撮った後に亡くなられていたんですね。まだ54歳、これからも演技を観たい俳優の1人だったので、非常に残念です。
【ネタバレです】
まずオープニングで惹きつけられてしまいます。頭から血を流しながらも、力のこもった目でヒトラーの演説に集まった大観衆を眺める男のアップ映像と「これは実話である。」という字幕。
嬉しのか楽しいのか興味深く周りを眺めるこの男の表情が気になって仕方がなくなります。そして本当に実話なの?という好奇心をくすぐるんですよ。
これはラストシーンを冒頭に持ってきているので、結末が容易に想像がついてしまうのですが、それを上回るインパクトを与えたんじゃないかと思います。
この作品は、シニカルなユーモアに溢れてます。コメディという雰囲気は全くないのだけど、ヒトラーやナチスをこれでもかと滑稽に描いているんですよね。
執務室に篭ってグリュンバウム教授と2人で演説のトレーニングを行なうのですが、ヒトラーは殴られて気絶し、犬のように吠え、子供の頃に父親から受けた虐待を語りだす。そしてナチスの親衛隊は、命令を実行するために数え切れないぐらい書類にスタンプを押さなければならない。鸚鵡返しのように「ハイル・ヒトラー」を繰り返し、ベルリンは空爆で廃墟になっているのに映画のセットのようにハリボテを立て、パレードを行なう。
こういった笑いがこみ上げてくるシーンも多々あるのですが、教授がユダヤ人であるがゆえに、ヒトラーに対する憎しみを内に秘めている。監督もユダヤ人ということで、単なるコメディで終わらせないという思いが伝わってきました。
2009年11月29日(日) DVD
わが教え子、ヒトラー@ぴあ映画生活