タイムスリップものなんだけど、SFという雰囲気は全くなくて、シリアスなサスペンスに仕上がってます。しかもタイムマシンを使わないから、機械が壊れたとか、燃料がないとかそんな悩みはありません(^^; ですから行ったり来たりが非常にテンポ良くて、じっくり見たらきっと矛盾点はあるんだろうけど、そんなこと気にならないほど、話に引き込まれました。
上映期間が2週間ぐらいしかないみたいですが、サスペンス好きならきっと楽しめると思います、ぜひ劇場で見てください!
幼い頃から度々肝心な場面の記憶を失っていたエヴァン(アシュトン・カッチャー)は、治療のため日記をつけることに。13歳の時、エヴァンは幼なじみのケイリー(エイミー・スマート)たちと悪戯をして大事故を起こすが、決定的な瞬間にエヴァンはまた記憶喪失になっていた。やがてエヴァンは引っ越し、大学生となったある日、昔の日記を読み返すことで、タイムスリップできることを発見する。
映画の冒頭に出てくるのですが「バタフライ・エフェクト」とは、”小さな蝶が羽ばたくと、地球の裏側で竜巻が起こる”という、わずかな違いが後に大きな結果の差を生む理論というカオス理論だそうです。
【ネタバレばれだ、見たくない人、見ないでね】 おそまつ
題名が映画を良く表していて、最初は昔の仲間を助けようとして過去をいじりると、他の人が不幸になってる、そのたびに過去に行くことで、収拾がつかなくなってしまう。誰でもすべて上手くいくことはない訳で、後悔するだけ成長できるとは思うのですが、あんな能力あったら、私だって過去に行っちゃうんだろうなぁ(^^;
エヴァンは引越す際に、ケイリーに「君を迎えに来る」というメッセージを残すのだけど、日記を見るまで彼女に会いに行くことはなかった。いつの間にか彼女のことは子供時代の思い出になっていたんだと思う。それがエヴァンの言葉が彼女を自殺に追いやったのをきっかけに、彼女への気持ちが蘇る。
この作品の上手いところは、初めて過去に行ったことの結果が、エヴァンとケイリーの2人の関係だけで言えば一番ハッピーなところ。それ以降はどんどん不幸になっていって、しまいには自分の手が義手になってしまう。エヴァンは一番幸せな状態を知ってるから、どうしてもそれ以下は許せなくなってしまう。だから歯止めが利かずに何度も過去にいってしまうのが自然に思える。
エヴァンはケイリーを幸せには出来ないことを悟る。
ケイリーがエヴァンが好きだったから、両親が離婚した時に本当は母親と一緒にいたかったのに父親の元にいたという話を聞いて、彼女がエヴァンを好きにならないようにするために、最後のタイムスリップを敢行する。この場面は冒頭のシーンと繋がっていて、逃げてきたエヴァンが「これが成功すれば、彼女は助かる、しかし失敗すれば僕は死んでしまう」というメッセージが、非常に心にずっしりきました。
ラストシーン、偶然の出会いがハッピーエンドにならず、これは良かったと思う。クァク・ジェヨン監督のラブコメならハッピーエンド大歓迎だけど、この作品はあのせつなさがぴったりじゃないでしょうか。出会っても彼はケイリーを幸せには出来ない運命なんだろうから。
2005年5月20日(金) 梅田ブルク7
バタフライ・エフェクト@映画生活