そんなに多く見たわけではないが、ラテン・アメリカを舞台にした映画はそれだけでインパクトがある。今の日本では、村や町のほとんどの人が下層の生活をしているという状況はまずなく想像できない。エクアドルの生活を切り取ったような映像だけでも、興味をそそられるとともに、得体の知れない怖さを感じます。
連続殺人鬼「モンスター」の被害者の葬儀の場で、被害者の弟が車にひき殺される事件が起こった。犯人は聖書の販売員ビニシオ(ダミアン・アルカザール)。彼は逃げ出そうと思った人たちにリンチにあう。ビニシオの息子、身重の妻は止められず、警官も自体を収拾できない。リンチを止めたのは「モンスター」を追いかけてきたTVレポーター、マノロ(ジョン・レグイザモ)たちだった。
翌日、刑務所に取材に行ったマノロは、「モンスター」の情報を教える代わりに、私の無実を晴らしてくれとビニシオから持ちかけられる。彼の話は、「モンスター」本人しか知り得ない情報だった。
久しぶりにあらすじ書いたけど、この辺りまでは文句ない。が、しかし・・・(^^;
【しっかりネタバレです】
オープニング、湖面から何かが出てくる。死体が浮かび上がってくるか、ゴジラでも出現するかと思ったが、普通のおっさん(ビニシオ)やん!結局、ビニシオが「モンスター」なんだけど、少しのカットでもいいので残虐な面も見せて欲しかった。確かに酒を飲むところはあったんだけど、あれじゃ弱すぎる。2面性をださないと片手落ちでしょう。
それに引き換え、マノロたちがスクープに固執しすぎた結果、「モンスター」を野に放ってしまうのはあまりにもお粗末だったが、仲間内での論争や真実を明かすかどうかの葛藤は、マスメディア関係者の心情がよく表れているんじゃないか。あえて真実の一端しか見せないことで、嘘ではなくても誤った情報を意識的に流す。これは日本のTVでもよくあることだが、スクープというのは魔物なんでしょうね。
「モンスター」の家族として残される妻。心の中に罪悪感を抱えたままのマノロたち。そのマノロたちをヒーロー視する視聴者。何もできなかった警察。ラストは本当に苦い終わり方でした。
刑務所で命を狙われる囚人がウンコまみれになって自分を守るというのは、人権なんて言葉は通用しない現実を痛感しました。
2006年2月11日(土) ナビオTOHOプレックス
タブロイド@映画生活