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【ハイサイ、シーサー♪】       映画・サッカー・競馬!
by borderline-kanu
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「蛇イチゴ」
「ゆれる」、「ディア・ドクター」の西川美和監督デビュー作品。
リストラされたことを隠してる父(平泉成)、ぼけた祖父を押し付けられても耐えてきた母(大谷直子)、正義感の強い小学校の教師の妹(つみきみほ)、勘当され詐欺で食いつないでる兄(宮迫博之)。この家族の建前、外面の良さ、見栄、プライド、そういったものが剥がれていき、本音があらわになる。会話と絶妙な心理描写で登場人物の人となりが丸裸になっていく様は、どんどんとせつなくなっていくけど、西川ワールドに嵌ってしまいます。

【ネタばれです】
「蛇イチゴ」_a0031718_1914342.jpg

演出に毒がありますね(^^; シュールで笑えないが上手い。
嘘をつくとそれを守るためにどんどんと嘘を重ねてしまうと言う話をしている時に、リストラされたのにスーツ姿で電車に乗る父の映像を流して、いずれ発覚することを予見させてみたり、また、妹の婚約者が家に来て、父と会話してる時の打ち解け合って話しているようでいて微妙な雰囲気を表現するのに、ぼけた祖父が空気を読まずに食事をがっついてる姿をアップで撮ってみたりと、観ていると胸がキュンと(ときめく方じゃないです。)してしまうんですよね。

祖父の死とともにあっという間に崩壊していく家族。そんな中、戻ってきた兄に頼ることで思考停止してしまう親に対して、兄を信じることができない妹。兄役の宮迫が詐欺師ぽいなぁという目の演技が抜群でした。

妹のクラスの男の子が生き物係で世話をせずに遅れてくるのを、お母さんが病気だからと言い訳する。でも周りの子供はその日お母さんが街を元気に歩いてる姿を見たと言う。子供たちが男の子が嘘を言ってるという雰囲気の中、妹は男の子を諭すのだけど、ある女の子が「本当にお母さんは病気じゃなかったんですか?」と先生に聞くんですよ。文章では伝わりにくいとは思うけど、嘘と思い込んでいた中のひょっとしたら真実かもしれない一言に鳥肌立ちました!

このシーンが終盤の展開とも繋がっているんですよね。兄に任せると家族がバラバラになるから追放するしかないと思い込んでいた妹にとって、家に蛇イチゴがあったことは衝撃だったと思います。狼少年が本当のことを言っても誰も信じてくれないように、兄も妹から信頼されてなかったけども、蛇イチゴによって、妹の見方が変わるのだろうか。

救いも無い話でラストの解釈は人それぞれだと思いますが、嘘のかたまりのような兄の良心を見せたことで、ひょっとしたらと思わせるのは、意地が悪い(^^;

2009年7月20日(月)DVD
蛇イチゴ@映画生活
by borderline-kanu | 2009-08-16 19:33 | 映画レビュー
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